雨が続いて涼しくなり今年の夏は短く感じますね。心なしかセミの声も例年と比べて静かな感じがします。先日、素数セミのことが書かれた本を読みました。17年間土の中で過ごし限られた範囲に17年に1回、50億匹もの大量発生で地表にでてくるセミがいるそうです。その年はうるさくて電話も出来ず、庭の木がひと夏でなくなったりするくらいなのだそうです。例えば15年セミと18年セミなど違う年数のセミが一緒に発生して交雑するとその子供は、あるものは16年後あるものは17年後に出てきてしまい仲間と出会えず、子孫を残せないまま数を減らし、その繰り返しでやがてどちらも絶滅してしまうそうです。ですが素数である17年セミは、どの年数のセミとも最小公倍数が250以上。ですから15年セミ、16年セミ、18年セミと同時発生するのは255年、272年、306年に1回ということになります。気の遠くなるような歴史の中で、素数セミは数を増やし生き残ってきました。今年?もアメリカでは17年セミが発生しているそうです。(アトリエでは取り扱っていませんが、詳しくは素数セミの謎をお読みください。3年生くらいから読めます。)こうして自然界では奇跡としか思えないような生き物達の営みがあります。人間も壮大な歴史の中で生き残ってきました。そんな風に思うとほんっとに今この瞬間の生を思いっきり生きたい、生きさせてあげたいと思いますね。これからどうなるのか誰にもわからないのに、今を犠牲にするのはもったいない。ツールドフランス覇者のグレック・レモンがガイヤシンフォニーの中で言っていましたが、時に大自然に身をおく時間を持つと本質に立ち返るきっかけになるそうです。人間は無理をしてでもそういう時間を持つ必要がある、子育てに迷った時は大自然に行ってみるのもいいかもしれません。
先日、素数セミのことを虫好きの1年生の子と少し話ました。アトリエの虫好きの子たちは好きどころのレベルではないので17年セミのことは知っています。(さすが)でもまだ1年生だと素数セミであることはわかりません。ですが好きこそものので、おそらく掛け算割り算を学ぶ頃になれば、素数セミと呼ばれる理由、生き残った理由、大量発生の謎などが理解できるようになると思います。虫から数学へ、それはやがて一つの宇宙となります。私が虫の種類がわからなくて写真を見せてその子に聞いた時、沖縄の虫・カメムシ・虹色・点があることからナナホシキンカメムシであることに推測からいきつきました。情報と情報がつながって答えにいきついたんですね。これから学名を理解するために英語も学ぶかもしれません、漢字も虫のことなら覚えるかもしれません。虫をよく知るためにはもちろん科学を学ぶ必要もでてきます。きっかけは“虫が好き”から、子ども達の世界はどんどん広がり深まっていきます。そんな風に世界がつくれたら素敵ですね。好きなことはもちろん集中しますから集中力も身に付きます。ただ環境がなければ広げることも深めることもできませんから、環境を用意してあげることは必要です。一度しかない子ども時代を誰も返してあげることはできません。毎日思いっきり遊んで「明日何して遊ぼう!」そう考えてぐっすりねむりにつける、遊びは学び、残り少ない夏、思いっきり駆け抜けさせてあげましょうね。

2021年8月③ アトリエ講師 星野由香