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先々週のアトリエは、粘土でパンのレリーフをつくりました。絵画と同じようにはじめは木炭でデッサンして、それから粘土を成型して、ボンドを貼り付け、それから全体を白で地塗りをして、ドライヤーで乾かしてから、着色して完成です。子ども達にとっては、工程も多く、根気のいる作業だと思うのですが、途中で疲れる子は殆どおらず、皆最後まで集中して楽しんでいました。おいしそうなパンの仕上がりに子ども達も大満足で、先週「今日、パン持って帰れるよね」と教室に入ってきた子がたくさんいました。

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モチーフのパンは、焼き色のきれいなものが欲しかったので、神戸のコムシノワというパンやさんで買ってきたのですが、買う時に話しの流れで、「このパンは絵のモチーフにするので、食べないんですよ。」っていったら、思わず店員さんが「可哀そう。」と言ってしまっていました。食べてもらえなくてパンがかわいそうということです。そういう思いの持てる店員さんっていいなあと思いました。最近は、どこへ行っても、技術的にも心情的にも、プロ意識を持った人に中々出会うことがありません。仕事をする以上、プロフェッショナルでありたいですよね。

アトリエで身についている一番大切な力は、能力的なことや技術的なことではなくて、物事に向かう姿勢なのだと思います。彼らが大人になった時、仕事をする以上は、プロでありたいという心情は育っているのではないかと思います。幼い時から、何かに没頭してとりくんで、達成した時の喜びを知っている子は、目のまえにある物事に対して真摯に向き合うようになります。それが創造的なことであるなら、集中することが心地よいということを、無理なく自然に知っていくでしょう。それはアトリエで育つとても大切な力です。

赤ちゃんから4歳くらいまでの発達は、世界的な科学者に匹敵するくらいの量を吸収しているそうです。この時期に何を吸収したのか、とりわけどんな心情で過ごしていたのかということが、その先の子
ども達の人生に大きく関わるということは言うまでもありません。全ての素は心情であり、心情の素は親子関係になるのでしょうね。能力や技術、何かの為、というよりも、子ども達の心情を大切にしてあげたいと願います。あっという間の幼き日々、これからの人生の土台ができる時期、大人も子どもも、一生のうちの一番幸せな時となるように、楽しんで過ごしたいですね。

2021年2月③アトリエ講師 星野由香