1617863896.jpg
前々回のアトリエ通信で童具は全て、フレーベルの恩物に従い、形の秩序に基づいて一つ法則でつくられていることをお伝えしました。アトリエの活動も同じで形をテーマにカリキュラムが組まれています。球からはじまり→円柱→四角・柱→三角・柱→点線面で半年サイクルになっています。前回の形のテーマが三角。三角の中でも四角を分割して生まれる直角二等辺三角形をテーマに作品をつくりました。(ちなみに前々回は正三角形)。始めに、粘土を6等分してから絵の具を混ぜて色粘土をつくり、それを並べてプレスしてから、四角に型抜き。それから対角線上に三角に分割して鏡の淵に貼っていきました。今回は特に同じ材料、同じ手順で、通常よりも制約の多い中でこれ程、皆違うものが出来たことに驚きました。その後は、ご覧頂いたように、ケルンモザイク四角で構成遊び。1三角(大)・2分の1三角(中)・4分の1三角(小)の秩序にのっとってつくらないとピッタリとは入りません。それが童具の難しいところであり、秩序さえわかれば簡単なところでもあります。子ども達は理屈で理解するというよりも、大きさの関係性を遊びながら直観していました。パズルに使用するケルンモザイクの選び方もそうですが、アトリエは、作品づくりとの関係性とつながりが感じ取れるような予備活動や導入活動を用意しています。
前回と同じく難易度の高いパズルでしたが、コツがわかっていてあっという間に出来てしまう子もいれば、同じくらいの能力でもデザインしようとするとパズルとして入らなくて時間のかかる子もいます。でも、デザインが好きな子はどうしてもそれがしたいんですよね(笑)。そしてなかなか入らない。アトリエではそれを“出来ない”とはとらえません。むしろ色々なパターンで考えるので、情報が増えて思考力が身についていきます。

1617863821.jpg

知識偏重主義や学歴主義の時代が終わり、コロナの到来で価値観が一気に変わってきました。今はむしろアトリエのような考え方に変化していっていることを皆さんも実感されていると思います。試験の内容もかなり変わりました。それに伴い、それに対応した習い事もどんどん増えていっていますよね。アトリエはそもそもそういう知識活用型の習い事なのですが。覚王山プレイルームの先生が話していたことですが「今、社会は教育に関して、和久先生と同じことを言い出し始めましたが、それは“学歴が、創造力や好きなことを見つける”、に変わっただけで根本的には意識が変わっていない」と言っていました。「“高学歴なほうが人よりも有利ですよ”というのを同じように“創造力があった方が人より有利ですよ”となってしまったら、それは何も変わっていない。言っていることは同じでも僕たちが思うこととは違うと思う」とおっしゃっていて、私も目から鱗で確かにそのとおりだと思いました。アトリエの創造共育のようなことは、付け焼刃ではできません。理論も哲学も実践も覚悟も必要です。教育を仕事とする人は目先のことにふりまわされず、まずは子ども達の今の幸せを願ってあげて欲しいと思います。喜びも悲しみもふまえ、輝きに満ちた子ども時代の積み重ねが、自分も人も幸せになれるような生き方に結び付いていくのですから。人より有利であることが幸せだと定義すると、ずっと求め続けなければなりません。軸が他人にある以上、自分より有利な人が常にいるからです。他人の思惑にひきずられず、自分の軸でしっかり生きていきたいですね。焦らず迷わず、今この瞬間の子ども達の輝きを見守っていきましょう。

2021年2月①アトリエ講師 星野由香