8月24日(土)、25日(日)に東京で積木の全国大会が行われました。教育者を中心に、フレーベル理論と積木の深さをより知って頂く為に、積木の歴史から積木を考案したフレーベルの恩物についてお話しした後での実践積木。和久ブロックは、フレーベルの恩物に従い、ここまでやらないといけないのか・・・というくらい理論や着尺、精度を追究しています。だからこそできる真理の探究。本物と呼べるものは、世の中そうはありません。突き詰めてきたからこそ、そこに小宇宙があることを、講師をするための学びの中で、実感しました。ここまでやらないと見えてこないものがある。ケルンブロックは積木の基礎なので、勉強すると積木のことがとてもよく理解できます。お母さん達にもお伝えしたいことがたくさんありますので、日を改めてケルンブロックの講座を行いたいと思いました。
和久先生の総計で5時間にわたる基調講演は、これまで学んできたことがつながりあい、脳が一時も休むことなく動き続けていました。すべてが、腑に落ちるというのでしょうか、かなり集中して聞いていたことで、これまでわからなかったことがひも解かれたような感じです。

人間が集中した時に自分では思いもよらないような能力を発揮する時があります。子ども達も、集中して創造活動を行っているうちに、自分も知らなかった表現の世界をつくりだし、自分で驚いている姿をよく目にします。アトリエでは当たり前の光景なのですが、もしかするとこれはアトリエならではのことであり、他のところでは、子ども達のこういう姿はなかなか見れないのではないかとこの頃、思っています。大抵の教育の場は、わからないことを大人が子供に教えてあげるという流れがあるからです。子ども発信ではないからです。

アトリエでは、子ども達の自由な表現を受け入れています。りんごだから赤に塗らないといけないとか、このパーツは必ずここにおかなければいけない、ということがありません。こうしないといけない、こうしないと怒られる、まちがったらどうしよう、子ども達のそんな思いを、アトリエではまず、とっぱらってしまいます。「やりたいようにやっていいよ。」という気持ちが伝わった時、自分が受け入れられていると感じた時、子ども達は自由になれます。自由にやりたいようにやれるから、どんどん集中して自分でも予期できないような力を発揮します。子ども達が何かをやり始めた時、「こうでもない、ああでもない、よく見て、どうしてこうしないの」など言われ続けたら、集中することなどできません。集中しなければ、真に持っているその子の力が引き出されません。
集中して何かをやり遂げた時の子ども達の表情は、昇華した喜びに満ちています。集中しているうちに、その間にも子ども達の能力が急速に成長していることを感じます。ほんの1時間前とは違う子になっているくらいの成長をするのが幼児期の子ども達です。その成長のチャンスを大人の手出し口出しが奪ってしまうのはもったいないですね。
集中力があるかどうかで、人生はかなり違ったものになってくるのではないかということは、皆、なんとなくわかっています。では、どうしたら集中力を育てることができるのかを考えた時、それは、アトリエの子ども達を見ている限り、“受け入れること”<受容>からすべてがはじまることを思います。
愛とは受け入れること、人間の求める愛と自由が、集中力へと結びついていく流れがわかりました。
親子クラスでの子ども達とお母さん達を見ていると、受け入れられているということを、知っている子はこんなにも自由になれるものなのだということを実感させられます。その子達が幼児、小学生となり大人になってゆく過程も、これまで何人も見てきました。簡単なことのようで実践するのは非常に難しいことだとわかりますが、先のことよりも今この瞬間の子ども達のそのままを、受け入れることは、やがての健やかな成長につながってゆくことをたくさんの親子の姿に思います。

先日、NHKの朝市という番組で、登校拒否児童の特集をやっていて、その時に自身も登校拒否で苦しんだ19歳の女の子からメールが届きました。「お母さん達、子どもの未来の心配より、今のことを考えてください。」短い言葉ですが、深く考えさせられます。
専門家の先生も、「子どもは未来を生きていない、今を生きています。子どもが生まれてくるときは、皆ただただ、生まれてきてくれたらそれでいいって思っていたはずなのに、半年もしないうちに、他の子と比べ出す、・・・それは命に対して失礼」とおっしゃっていました。
「あなたが生きていてくれたらそれでいいんだよ」という親の気持ちが伝われば、子どもはちゃんと生きてゆくのだそうです。究極の受容であると思いました。

子どもの将来を案じて、色んな能力を身に着けさせるために、たくさんの習い事に行かせるのも愛かもしれませんが、その場合、大抵が親の思いが優先して、子どもの思いが反映されていません。子どもは、親の愛を獲得する為に、イエスと言いますから、「自分からやりたいって言ったんです。」という言葉を聞きますが、子ども同士で話している内容や本人に話しを聞くと全く違うということは、少ない例ではありません。

子どもの力を信じる大人達の肯定的なまなざしの中で、子ども自身が大丈夫だと安心できる気持ちになれば、子どもの中にも、何かできるんじゃないかとい気持ちが湧いてきて、それが生きる力になってゆきます。その力を発揮するのが集中力であり、その為には環境がいることを感じました。

人生は一度しかありません。ナチス強制収容所を体験した心理学者・ヴィクトール・フランクルの20世紀を代表する名著「夜と霧」の中で、過酷きわまりない外的環境におかれながらも、人間を特徴づけ、存在意義を与える唯一性と人生の1回性は、一人ひとりの人間に備わっているかけがえのなさを気づかせ、それに気づかせることが、生きる意欲と責任を自覚させると書いていました。それは、どんな状況でも生きる力を持つためのベースになる力であるようにも思います。だから、そのことに気づかせてあげる為にも、将来のことは心配であろうけれども、今、この瞬間の子ども達の喜びに満ちた姿を、共に喜べるお母さん達であって欲しいと思いました。
★今年の積み木フェスティバルは10月26日(土)です。6年生・卒業生ボランティア募集中です。
(ボランティアのお昼は星野のおごりだよ)。お申込みはスタッフまで。

2019年9月②アトリエ講師 星野由香