2018年度、最後の活動となりました。6年生は今週で卒業となります。今年も、たくさんの子ども達が6年生まで通い続けてくれました。おねえちゃんの代から3姉妹、約17年間もアトリエに通い続けてくれたお母さんもいます。兄弟で通って下さっていう方も多いので、皆さん、上の子の受験や部活、PTA役員等々、このアトリエに来る時間を作り出すのは、並大抵ではなかったと察します。本当にありがとうございました。

殆どの方が、私との体験参加からアトリエとの出会いがはじまったのではないでしょうか。私は体験参加を18年間、同じやり方で続けてきました。同じことをするからこそ、子ども達が“一人ひとり、違うのだ”ということが、目の当たりにして実感してきました。また、逆にこういう部分は、どの子も同じことをする、ということもわかります。そこには、人間にとって必要な本質があるのでしょう。その中で一番、感じてきたのは、子ども達の「やらされたくない」という願いです。強弱はあるにしても、そうなるように育てたわけではないのに、どの子も“やらされる”ことに敏感で、それを心底、嫌がります。大人もそうですね。誰だってやらされたくはない。人間は、自分の意志でやりたい生命なのだと子どもたちから、教えられます。そんな生命が、やらされることばかりの日常をおくっていると、生命力がなくなってくるのは当たり前のことです。怖いのは、それが普通になると、そっちの方が楽になってくることです。

ミヒャエル・エンデの言葉 (モモ より抜粋)

遊びを決めるのは監督の大人で
しかもその遊びときたら何かに役に立つことを
覚えさせるためのものばかりです。
こうして子どもたちは
ほかのあることを忘れてゆきました。
ほかのあること、つまりそれは
たのしいと思うこと
夢中になること、夢見ることです。


アトリエの子達は幸せだと思います。
ここで集中している子達は、作品づくりも、最後の詰めまで集中力を欠かしません。その体験はこれからの人生に大きな意味を持つことを思いました。子ども時代にそういう体験をしておかないと、社会に出た時、“集中して物事にとりくむ”、“とことん追及して最後の詰めまでやり遂げる”、ということが、どういうことなのかがなかなかわかりません。大人になってからそういう姿勢を身に着けるのは非常に難しいのではないかと思います。
夢中になって集中している時の子ども達は、筆を走らせる手が、どれだけしんどくても、最後までやり遂げます。自分が納得がいくまで、集中してやり遂げた時の達成感を知っているからです。そういう達成感を知っている子ども達は、勉強が必要になった時や、社会に出た時にも、目の前の物事に取り組む姿勢が習慣づいているので、ちゃんとやらないと自分が納得いかないのだと思います。
アトリエの卒業生に、塾に行かなくても、優秀な子が多いのは、そういうこともあるのだろうと思います。最終学歴は、勉強ばかりしていた子達とさして変わりません。勉強が苦手な子も、自分の好きなことや、やりたいことをするための勉強はするようです。そしてやりだしたら集中する、とことん追及する、やり遂げる。私はこの力があるなら、どんな社会になっても、生きてゆける!と思います。これからどうなるかわからない社会で、子ども達の身を助けてくれるのは、そういう力であるように感じます。
今年の卒業生もそういう力を身に着けてきました。

ヘルマンヘッセは、人生の義務はたったひとつしかない、幸せになることだ、と言いました。
いつか幸せになる為に今を犠牲にするのではなく、
人生のどの時点においても、その瞬間を幸せなものにしてあげたいですね。その積み重ねがやがての新たな幸せをつくっていくのだと思います。

2018年度、大変お世話になりました。2019年度も、子ども達の居場所としてのアトリエとなれます様、精進してまいります。これからもよろしくお願いいたします。

※別紙の月謝の値上がりは大変心苦しいのですが、ぎりぎりまで考えた苦渋の決断です。
何卒、事情をご理解頂き、ご協力頂ければと思います。

2019年3月③アトリエ講師 星野由香