10月、11月にかけていくつかの園で4歳児を中心に絵画指導をしてきました。和久先生も講演会で話しているとおり、どの子も素晴らしい絵を描きあげ、「こんなに集中するなんて」「この子のこんな姿は見たことがない」という言葉がどの園でも聞かれました。子どもは集中すれば必ずいい絵を描きます。人間には美を感じるDNAがあると言います。集中することで美の調和に対して敏感になるのかもしれません。これは絵に関することだけではなく、集中力がいかに人間の能力をひきだしてゆくのかを考えさせられます。

アトリエ式(遊びの創造共育法)で絵画や積み木、造形を行なうと、どうしてどこの園でもどんな子でも集中する姿をみせてくれるのか、この度の絵画指導を通してもう一度整理して考え直してみました。

子どもの表現活動で重要なことは、まず集中できる環境を用意することだと思います。アトリエ式の環境づくりとしては、「好きなようにやっていい」「やりたいようにやっていい」と声にだして言わなくとも、これからあなたのすることは全てうけいれますよということを、子ども達に伝えることからはじめています。子どもは“この大人は本当に自由にさせてくれる人”なのかどうかをものの数分で見抜きます。それが見抜ける子ども達ですから、本物を与えるということも大切なことだと思います。本物を与えられるということは、決して子どもをいい加減に扱っていないということです。

自分のすることを受け入れられていると思えると子ども達は自由になれます。間違っていたらどうしよう、上手にかけなかったらどうしようというプレッシャーから解放されて、自分の思う表現ができます。親や先生の目や思いに縛られている子ども達はたくさんいるように思います。自分の思うようにやっていい、好きなようにやっていいから楽しくなる、集中できる。そしてその子らしい素直な作品が生まれます。そこで生まれた絵は、誰に教えられたわけでもないのに、見事に美の調和がとれています。

アトリエを開校して17年目になります。たくさんの子ども達が絵を描く姿、ものをつくる姿を見てきました。大人が手出し口出しをしなければ、どれ程豊かで質の高い作品が生まれてゆくのかを何度も何度も見てきました。だから私は子どもの力を信じることができるようになりました。何かをつくったり、描いたりすることだけでなく、人格やしつけも同じことが言えるのではないかと思うようになってきました。
教えてあげないと描けない、わからない、賢くならないのではなくて、自分で見つけて発見してやってみて、描けるようになる、わかってくる、賢くなるのだと思います。

そうなる為には、受け入れる(信じる)⇒自由になる⇒集中する、という環境をつくること、本物を与えること、なのだと思いました。是非、自分の生き方を自分で見つけられる環境をつくってあげて下さい。今、ピカソクラスの子ども達が仕上げた見事な絵が、アトリエの壁面にかざってあります。そのお話しも
来週、アトリエ通信でお伝えしますね。

2017年12月①アトリエ講師 星野由香