毎年2,3月は6年生の卒業を思い、子ども達との時間が名残惜しくなります。
一人一人、どんな子も6年生になるまで色んなことがありました。
なかなか椅子に座ってくれない親子コピカ、1人で入れない幼児コピカ、しょっぱなから躓いた1年生、学校ではずされて苦しんだ日々、なんでもかんでも反抗するギャングエイジ、思春期のはじまり。すんなり6年生になった子など1人もいません。


どんな子もどんな親も講師と共に悩み続けた日々がありました。
今、こんなに逞しく、優しく、感性豊かに育ってくれた子ども達を誇りに思います。

先週のピカソクラスでは、谷川俊太郎さんの随分昔に出版された「これはのみのぴこ」(絵 和田誠)、去年出版された「これはすいへいせん」(絵 ツペラツペラ)をモデルにつみあげ絵本をつくりました。畑先生が本屋さんで「これはすいへいせん」を見つけてピカソの絵本づくりの参考になればとアイディアをくれて、二人でカリキュラムにしました。時間が限られているので、まず、たまごからはじまりたまごで終わるというルールを決め、予め用意した30個のWORDから8個をランダムに選び、コラージュしてから、文章は後でつくるという子ども達にまるなげのカリキュラムでしたが、さすがアトリエ育ち、絵本育ち、本好きの子ども達、期待以上にやってくれました。文章をつくるのに困っている子は殆どいませんでした。

その中でも、もう完璧という作品をつくってくれたのは、1歳から通ってくれている5年生のKちゃん。口数が少なく1人でもくもくと作品をつくるタイプの子です。別紙にて全ページ紹介しているのでご覧ください。この「けっきょくたまご」っていう題名からいいでしょう?とても絵本的です。言葉のセンスもすばらしい。やりすぎないシュールさが絶妙で全体にまとまりがあり、題名がおちをつくっています。プロの仕事や!!と思いました。他にも、“自分のやりたくないことは絶対しない”と座右の姪にしてるんじゃないかと思うくらいの3年生のYくんも、あっという間につくってしまい、後でお母さんから、読書感想文は表彰されると聞いてびっくり。また、私がずっと前に話していた子猫を拾ってきた時のことを4時間かけて絵本にしてくれたKくん、畑先生を登場させている6年生。アトリエは毎週、ドラマと感動がいっぱいです。アトリエは形のテーマという軸の中で、色んな素材をつかって、色んなことをするので、子ども達の意外な才能に気付けます。誰もがどこかでヒーローになれる、これもアトリエの魅力のひとつだと思いました。

私の物語をつくってくれた6年生のKくんは、個性的で、時にその言動、行動で誤解されることもあり、私は、どんなことからも何からもKを守るとずっと思ってきました。でも今回の絵本をつくる姿を見て、Kなりの私への気持ちを感じ、胸が熱くなりました。こんな時、いつも思うことがあります。大人が子どもへむける愛情よりも、子どもが、私達にくれる愛情のほうがずっとストレートでずっと深い。私は自分に持てる子ども達への愛情を尽くしているつもりでいるけれど、それよりもっと大きな愛情を子ども達からもらっていることを思います。それは、6年生の子でも1歳の子でも変わりない深さをもっているとさえ感じます。
6年生にとっては残り1ヶ月。子ども達との日々を私自身も悔いのないようにすごしてゆきたいと思いました。

2017年2月③アトリエ講師 星野由香