前回の絵画は、夏の太陽をいっぱい浴びて急成長した子ども達の姿が眩しい1週間でした。夏は、夏休みで子ども達も解放されているからか、普段もすごいけれど更にいい絵を描きますね。今年は特に、“この絵から、この子が突然変わった”という姿が続出していました。
これまで思いのままに描いていた親子コピカから通っている年長さんのSくん・Hくんの2人。今日は突然デッサンで手が止まります。何回も何回もモチーフを見に行き、観察して、眉間にしわを寄せて、木炭で手を真っ黒にして描いていました。何回も何回もどう描いていいのか困っていました。突然の自分の変化に自分がついていけてない感じです。ここまで苦労してデッサンを描いて次は着色。また何回もモチーフを見て色づくり。やっと描きあげたと思ったら、次には背景の着色が待っています。きっとアトリエの後、爆睡しているだろうなぁと思いました。こんな時、出来映えの評価なんてどうでもいい。この子達の画面と向き合った時間、自分と向き合った時間が何よりも人生の財産です。

お姉ちゃん2人がそうであったように、3女4年生のNちゃんにもそんな瞬間が訪れました。「どうしたん?今までと絵が違うやん?」って声をかけると「うん…うん。そう、私もそう思う。」と自分の描いたデッサンが自分で信じられないかのような表情のNちゃん。それから見事に夏まっさかりのひまわりを描きあげ「こんだけいい絵描けたら気持ちいいやろ?」って言ったら「うん。すごく気持ちいい。こんなに気持ちいいのはじめて。」と満面の笑顔で帰って行きました。その笑顔は、親子コピカから6年生の卒業まで見てきたお姉ちゃん2人の姿とも重なり、胸の熱くなる思いがしました。

入退院をくり返しているSくんは数ヶ月ぶりのアトリエ。あとでお父さんに聞いたら病室から出られず1ヶ月ぶりの外出。外に出られたことが嬉しくて嬉しくて喜びに溢れていたそうです。Sくんにとっては、チューブから絵具を出すだけでも心底嬉しい、嬉しい、嬉しい。その心が伝わります。少し前まではその嬉しさが優先し、アトリエの時はいても立ってもいられないSくんでしたが、この日はその嬉しさが、画面に向かう真剣さ、集中力に変わっていました。その力強い姿は、大自然から自分の小ささを突きつけられたかのようでした。病気のSくんもこんなにがんばっているんだから私もがんばらなきゃ、みたいなものは微塵も感じさせられませんでした。そんなものじゃない。私の中から色んなものが吹っ飛んで行きました。子どもの真の喜びの姿は、大人を変えることがあります。私は、今、この瞬間に自分が変わった、Sくんの姿に自分が成長させられたことを実感しました。

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2016年8月③アトリエ講師 星野由香