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先週は、6年生にとって最後の造形活動の日でした。
点線面をテーマに石こうの化石づくり。ホネホネたんけんたいシリーズのホネホネどうぶつえん、ホネホネすいぞくかんを参考にして、機械部品やネジ、貝、三葉虫、アンモナイト、ロープ、結束バンドなどを型押しして粘土版に生き物の骨のレリーフをつくり、そこに土手をつけて石こうを流し込みました。
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上記、写真がその作品ですが、あまりにかっこよく仕上がり、やっぱりこの子達はすごいなあと思いました。
私は今まで、最後の作品はこれまでにないくらい最高の物をつくりたいと思っていると思い込んでいたので、よく6年生に“最後だから・・・”みたいなことを言っていました。
去年、それがプレッシャーになってしまった子が居たので、今年は何も言わず見ていると、彼らはいい作品を残したいという思いはもちろんあるけれど、そんなことよりもずっと大切にしているものがあることに気付きました。
アトリエにいられる後、わずかな時間を心底、楽しもうとしている。この空間をいつくしむように仲間と先生とアトリエの時間をすごしている、そんな感じがしました。
作品という形に残るもの、形にはならないけれど一生心に残るアトリエの時間そのものを、彼らは一生懸命、大切にしてくれたのだと思います。
この一年で一番笑ったアトリエの時間でした。そしてそれも集中して過ごした時間のひとつなのだと子ども達から教えられました。
以前、アトリエ通信でご紹介した鈴木まもるさんの“鳥の巣をもとめて”という著書の一文に「鳥によって生態は違います。
どんな環境にすみ、何を食べるのか、どんな敵がいるのかも違います。その中で一番大切な卵、ひな=自分の子ども=を安全な環境、空間で産んで育てたいという本能があるのです。」「これは鳥に限らず、ほかの生物も全て同じです。もちろん人間も。人間の親も自分の子どもを大切に安全に育てたいと思う気持ちは同じです。ただ人間の場合、“大切”が過保護、“安全”が儲かる職業=有名大学=有名高校、中学、小学校、有名幼稚園=お受験等々となるわけで、微妙にズレていったり、シワ寄せが子どもにいってしまって、ときどきへんな事件がおこってしまうこともあります。」と書いてありました。
私も同じことを思いますが、この社会をつくった1人の大人として胸の痛い思いがします。
このままでは、子ども達はどんどん追い詰められてゆきます。子ども時代を奪われてゆきます。これでは、生きる力が育ちません。目に見える外側の能力にばかり気をとられていたら、子どもの内側で何が起こっているのかを見落としてしまうこともあります。
外側の能力も、大人は、子どもの将来の為にレールを敷いたつもりでも、今の時代の変化を思えば、子ども達が大人になる20年、30年後にそのレールが通用するとは思えません。
日本企業の終身雇用制度も年功序列制度もすでに崩壊しているのですから。なんの保障もないレールの為に奪われた子ども時代は二度と帰ってきません。
子どもは子どもを生きています。“今”を生きています。その瞬間の積み重ねが子ども達の生きる力を育んでゆきます。自分の足で立ち、自分の頭で考え、自分で第一歩を踏み出せる人になれるように、自分の為にも、人の為にも生きられる人となるように、輝きに満ちた子ども時代をおくらせてあげたいと願います。
同じ思いで長い間、アトリエに通ってくださったお父さん、お母さん、本当にありがとうございました。上の子の時から須磨から16年間、明石から15年間、通い続けてくれた方もいます。開校当時からのお母さん達は、生徒の保護者というよりも私にとって共にアトリエをつくってきた、共に子ども達を見守ってきた同志のような存在でした。
わが子だけでなく、他の子も一緒に見守るアトリエの雰囲気は、はじめのお母さん達がその土台をつくってくれました。今年の卒業生も殆どが10年以上のお付き合い。彼らの一生を通して、私の一生を通して、この出会いに感謝します。
長い間、本当にありがとうございました。
先々週の絵本「ねこのおすしやさん」(超うけました!)
先週の絵本「つみきでとんとん」「ぼくのまちをつくろう!」(受けましたよ!)
※来週、再来週と4月までお休みです。
※4月1回目の親子はとくに汚れます。お着替えをご持参下さい。
2016.3.(3)アトリエ講師 星野 由香