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新年、あけましておめでとうございます。
2016年、今年もよろしくお願い致します。
昨年は、世界が大きく変化した年でもありました。こうなってしまうんじゃないかと、なんとなく描いていた不安が、形になって現れてきた、そんな感じがしています。
子ども達の現状も、いつかこうなってしまうんじゃないかと今、不安に思っていることが、多分この先、現実になってゆくのだろうと思います。
これからの社会を生きてゆく子ども達に、なんとしても育てなくてはならないのは、地にしっかりと足の着いた“生きる力”、そして、人を思いやれる“こころ”。
それは、人間の外側につくものではなく、内側につくもの。私達自身も、広い視野と深い洞察力をもって、創造的な生命としての人間であるように、学び続けてゆかなければと思います。
今年も、表面的な価値に流されず、かけがえのない我が子の魅力を見失ってしまわないように、そしてまた、私達大人もかけがえのない自分自身を見失ってしまわないように、子ども達の輝きを見守ってゆきましょう。
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昨年度最終の活動、積み木の山脈づくりは、どのクラスも“なんで?”というくらい集中していました。まるで早送りの動画を見ているかのように“積む、積む、積む”子ども達。皆でやっているのに、「まけへんぞう!」と言いながらやっている子もいました(笑)。
おもしろいと思ったのは、壁側に積んでいた子達は、皆デコボコになるのを嫌がり、ほとんどの子がピターっと積んでいたこと。お母さん達がイタズラをしてわざとデコボコをつくると、すぐに子ども達になおされていましたね。
逆に、戸棚側で3倍体角柱が土台になっていた方は、デコボコに積む子が多く、土台の設定だけで子ども達の求める世界がこんなにも違うことに驚きました。「こんな風にしようよ。」と言っても、全く無視で、てんでバラバラになることもあれば、何も言っていないのに全員が一致を好むこともある。
子どもは一人ひとり違うのですが、同じような行動になる時は、そこに人間の求める普遍性を感じます。それが何かを考えるのが、我々講師の学問するところです。
また、そんな姿に学べるのも、積み木のときは、テーマの違う活動をしていても必ず、WAKU-BLOCKを使うからです。
WAKU-BLOCKの徹底した着尺は、常にある一定の同じ条件をつくりだすことができ、物理的に正確な状態を用意しることが出来るので、活動や設定の違いにより、子どもの行動が変化することや、子ども達の成長がよくわかります。

世界一の積み木
私は、童具に出会うまで、漠然と木のおもちゃが良いと考えて頂けで、和久先生の本で「いい加減な木のおもちゃならちゃんと考えられたプラスチックのおもちゃのほうがずっと良い。」と読んだ時には、目からうろこでした。
高校生のときだったと思います。この考え方は、いろんなものにあてはめることが出来ました。この仕事をするようになってから、色んな積み木を見たり、本物だと思えるものは、買って遊んでみたりしましたが、それぞれにその良さはあるけれど、白木の積み木では和久洋三の積み木が、世界一であることを確信できました。
“積み木は、着尺が大事”ということは、今ではどのメーカーも言っていますが、それなりに着尺を考えているのはわかるけれど、WAKU-BLOCKほどに徹底している積み木には、出会ったことがありません。
また、積み木のいろはには、数量的にも幾何学的にも色彩にもあいまいさの残るものは、ひとつもありません。
そして品質と技術力。下町ロケットじゃないけれど、日本の職人技や物づくりの技術を日常生活の中で見てきて、また、木と共に生き、遺伝子に脈々と受け継がれてきた日本人なら積み木の品質は、手にとらなくとも目で見てほとんどの人がわかるのではないかと思います。
数量的なことにしても、日本人なら、100ピースを3種類にはわけませんよね?33,33、34ってなんか嫌でしょう?四角に斜めの線をひいた時、角がずれていたら気になりますよね?日本人はそういうところには、ものすごく繊細な感覚を持っているのだと思います。
WAKU-BLOCKのH4(いろんな形が入っている積み木)は、形によって積み木の数が考えられています。全てにおいて一切の矛盾がありません。長年に渡り、修正があり、改良があり、その集大成として“積み木のいろは”は完成しました。それは、ひとつの小宇宙です。
アトリエの子達は、世界一の積み木で世界一よく遊んでいます。一生のうちに世界一と呼べる何かを持てることはそんなにはありません。その世界一に子ども時代に出会っている。しかも、家にある。私はそれだけでも子どもの人生に得るものは、非常に大きいのではないかと思います。
日本で一番売れている絵本“いないいないばあ”の絵を手がけた瀬川康夫さんは、赤ちゃんが始めてみる絵がいい加減なものであっていいわけがない、画家が懇親の力を込めて描かなくてはならないと言ったそうです。
絵本を日本に定着させた立役者、松居直さんは、作家は子どもの感性の育ちに責任をもたなくてはならないと言いました。“子どもの感性の育ちに責任を持ったもの”それが本物と呼んでいいものです。
つくり手が子どもをなめていない、子どものすごさを知っている、“相手は子どもなんだぜ”ということがちゃんとわかっている。絵本もおもちゃも教育も、根底にそれがあるものこそ、子ども達の“生きる力”と“こころ”を育ててゆくのだと思います。
今年も生かされていることに感謝し、一人ひとりの子ども達が、本来持っているかけがえのない個として、輝きに満ちた子ども時代をすごせるように、子ども達の真の幸せを願っています。
2016.1.(1)アトリエ講師 星野 由香